「ひとのま」見学レポート その1

コミュニティハウス「ひとのま」を見学してまいりました。以下はレポートです。

富山県高岡市にある一軒家を解放して、誰でもいつでもいていい場所がある。
高岡駅から徒歩10分の、観光スポットのごく近くにその一軒家はある。
ガレージにはみんなで書いたと思われる絵がかかれていて、表札には「ひとのま」と書かれている。玄関前にはニワトリ小屋があり、地域の方からいただいたニワトリを飼っている。既に一羽みんなでありがたく頂いたらしい。部屋に入るとすでに地域の方が10人近く、想い想いの時間を過ごしていた。そこに宮田隼さんがいた。
宮田さんは塾講師である。以前、塾で働いていた時、子ども達が「死にたい」、「親とうまくいってない」などの子どもたちの相談や悩みを聞くうちに、「子どもたちが勉強する前にやらなきゃいけないことがある 」と感じたという。そうして塾で様々な相談を受けたりしているうちに、塾側から「あなたのクラスは生徒たちの参加が多いが、勉強する時間が短い」と指摘を受け、自分もその通りだと思い、塾をやめた。


そして2011年、家を借り、「好きに使ってよ」と、一軒家を解放した。
宮田さんは別の場所で塾を経営している。月水金は宮田さんがいる日。一回300円とのことだが、払えたら払ってねのスタンスで、必ず徴集しているわけではない。一応10時から18時まで。月水金はみんなで夕飯を食べる時間を設けている。毎日30人近くの人達が出入りをしている。利用者の半数は不登校の子どもたち、発達障害や精神疾患を抱えた20代から40代の働けない人などが集う。スタッフはいない。


食べ物がないという相談が多く、フードバンクとも連携をしている。また、利用者に声をかけて家で食べない物などを集め、相談に来る人に渡したりもする。
サービスや、プログラムはなし。きている人達が場を作り上げていくという。ルールも何もない。本人たちがこの居場所の意味を理解して、みんなが自然に守っているという。あくまで宮田さんは「家を借りている人」それだけのスタンスである。


最初は、地域の人たちから変な目で見られていた。何か宗教をやっているのではないかと思われていたという。しかし、新聞や、民放で取り上げてもらったり、メディアに出ていくことで地域の理解を得た。1番大きかったのはNHKで取り上げられた事だという。

そのうち近所の相談事を受けたり、行政側でも対応できないDV被害者の方を匿ったりする場所にもなっていった。行き場がない人が少しの間住む場所にもなった。犯罪を犯した人が出所後に行き場がなく、ひとのまで少しの間生活することもある。対応は、ひとのまに集っている人達。宮田さんはひとのまにいないことも多いからだ。最初は利用者から、犯罪を犯した人なんてと反対意見が出たそうだが、宮田さんはこう問題提起したという。「きみ達は、不登校だから、発達障害だから、精神疾患だから、という目で見られて、そういう目で見られる事をとても嫌だと言っていたよね。じゃあ今君達はその嫌だなと思った自分がされていた目をその人達に向けるのか、犯罪者だと一括りにして、排除するの?」と。そうすると利用者達はそれもそうだと理解したという。そして、実際に本人達に会って話を聞いてみると、自分と同じ生きづらさや、自分達よりももっと悲惨な現状が見えてくる。みんなで大変だったねと労いながら夕飯を食べ、その人もひとのまの仲間になっていく。そういった環境が出来上がっている。


これも宮田さんが作ったわけではない。利用者が作り上げた場なのである。
とことんかまわない、とことんほったらかす。自然に培った信頼感を感じて、わかってほしいと宮田さんは言った。