デジタル監視と人権侵害

国際人権NGOアムネスティインターナショナルさんの「デジタル監視と人権侵害~あなたの個人情報はどう使われるのか~」をyoutubeのライブ配信で観ることができました。非常にお話も分かりやすく、うんうんとうなずきながら話を聞かせていただきました。

講師はジャーナリストの小笠原みどりさんでした。
今回の学習会も後日観ることができるそうです。

アムネスティのyoutubeチャンネルはこちらから。https://www.youtube.com/channel/UCORjHwL9wdznqi94vRVyBhA

デジタル庁創設、個人情報保護法改正を盛り込む「デジタル改革関連法案が」4月6日に衆院本会議で賛成多数で可決されました。63本という大変多くの法案が一括で審議され、28時間ほどの審議時間で可決されてしまいました。このような短い時間では議論を深めることはできません。

今回、私たちに伝えられることはコロナによってデジタル化が遅れていることが顕著になり早急にデジタル庁を新設するとの報道がなされ、私たちは給付金を受けるときの混乱を思い出し、確かに!と思ってしまうかもしれません。しかしながらCOCOAも成果を出せないどころか不具合で実機テストが行われていなかったことなどが明るみに出て、何のための?と疑問に思う方も多かったと思います。私たちの日常の動きをデータにしながら様々な情報を吸い上げていただけではと考えるのは私だけでしょうか。個人情報の保護の観点や人権への配慮がなされていないこの法案自体に大変問題があります。

便利さと引き換えに、一人一人の日常の暮らしの全ての情報を政府や企業に取られ、事実上の監視状態になる懸念については報道などがされないために国民はよくわかっていません。直接的な監視は政府だけではできません。そこには通信会社やアプリ会社が情報提供を行っているということを忘れてはいけません。

IT企業はこのコロナ禍でのステイホームで莫大な収益を上げました。ニューノーマル(新しい生活様式と日本では言われます)、アフターコロナともう元の生活には戻れないという風潮を私たちに植え付けています。企業が行いたいことは、個人データをとるビジネスモデルで、私たちの日常を見通し次に何をするかという予測を立て、商品を買わせる、興味がなくても誘導してその気にさせ買いたいという次の購買行動へつなげることです。私たちはインターネットで購買をするということで分析され、心理戦で商品を買わせられていることに気づきません。そして、そうして得たデータは他の企業に販売されていくのです。つまりは私たち自身が商品になっているということなのです。

こういった流れの中、政府に情報提供がなされていくとどのようなことが起こるでしょうか。政府に対して異議を唱える、デモをする、文句を言う。そういったことがデータとして蓄積され、テロ防止目的から要注意人物として監視対象になる。このことは容易に推測できます。

さて、私はそんなことしないし、関係ないからと思っている人たちもいると思います。しかしここで何も思っていなくても要注意人物にされてしまういい例があります。大垣警察市民監視事件です。2005年から岐阜県大垣市上石津町と不破郡関ケ原町に連なる山の尾根に巨大な風力発電施設建設の話が持ち上がり、地元住民の方々は環境破壊や低周波の問題などの健康被害に不安を感じて勉強会を行っていました。すると大垣警察が勉強会を開いた地元の住民の指名、学歴、職歴や病歴などの個人情報、地域の運動の中心となっている法律事務所に関する情報を事業者に提供していたことが明らかになり、現在も裁判が続いています。本来、何らかの犯罪が起きたであるとか、事件が起こって捜査中ということでの個人情報入手はされると思います。しかし、犯罪を犯す可能性があるという根も葉もない推測にもとづいて市民を危険人物とみなし監視対象にする、ということが現実に起きているのです。警察などから見れば、みんながみんな「怪しい人」なのです。関わっている人も対象、関わるかもしれないという予測不明な人も対象となってきてしまうのです。こういう監視により、言論の自由の弾圧がおこなわれていくのです。

政府はマイナンバーカードを2023年までに全国民取得させる方向です。今まで自発であったものが強制されていくのです。
住民情報、医療、教育、収入、学歴、親がどんな人か、など様々なデータが一元管理されていきます。私たちの一生が丸見えになるのです。
私たちはこのデジタル監視社会において、常に見張られていることを前提とし、行動するようにしなければならなくなっていきます。

日本がこのような動きの中で、海外ではどのようになっているのでしょうか。
今、海外ではデジタル監視を防ぐために動き出している国があります。個人情報の目的外使用に罰則を科す、個人情報利用ではなく、人権に根差した独立監督機関を設置し、例外をつくらない。政府による生体情報の収集を禁止する。プライバシー侵害の実態を明らかにし国際的な個人情報の目的外使用スパイ行為禁止の枠組みを作る、などが行われています。

こういった個人の情報の使用を無駄に広げず、しっかりと目的に沿った使用以外を禁止していくことが、日本の法律でも必要とされているのです。
ですから、今の日本のガバガバな法案の中身では、国民一人一人の人権を守ることはできないのです。
世界から何周遅れているのだろうと暗澹たる気持ちになりました。

GIGAスクール構想にも触れており、子どもたちがコンピューターと向かい合う意味をもう一度考えなければいけないと小笠原さんはおっしゃっています。個別最適化の下に進められる学習の先には何があるのか。コンピューターと向き合う=孤独になることだとおっしゃっていました。コンピューターの世界で知識を詰め込んでも成立しない、人間的なつながりが学習にとっていかに大事かを考えなくてはならないと。おっしゃる通りだと思いました。

この、今のデジタル関連法案の中身を今一度国民が理解し、不備があるところを指摘する議員さんを応援し、法整備を進めていかなくてはいけません。

Q&Aでも様々な疑問が出ており、大変参考になりました。ぜひ、youtubeで観ていただきたいと思います。